syouwanowasuremono’s blog

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昭和の忘れもの

「バイクとバイト」

【ホンダ スーパーカブ】 バイク編③

 

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 原付といえば、誰もがホンダのスーパーカブを思い浮かべるだろう。

 そば屋の出前や新聞配達でおなじみの「働くバイク」のイメージだが、驚異的な燃費の良さとエンジンの耐久性はもちろん、日本で(乗り物として)初めて「立体商標」に登録されたことも含め、ある意味究極のマシンと言える。

 そんな名車にまつわる残念な話である。

 高校時代、二輪の免許を取る者がちらほらと出始めた頃だ。一口に二輪といっても原付(50㏄以下)派と自動二輪(当時は排気量制限無し)派に分かれたが、筆記試験だけで取得できる手軽さから前者が多数派だった。真のバイク好きは程なく自動二輪免許にチャレンジすることになるのだが、一日も早く免許を取ってバイクに乗りたいと思う気持ちは理解できた。

 さて免許を手にしたものの、誰もがすぐにバイクを持てたわけではない。一部の裕福な家庭を除き、たいていはアルバイトで汗を流して資金を工面していた。涙ぐましい話である。一方で、逸る気持ちが抑えきれず、アルバイト代を貯める時間を惜しむ連中がいた。彼らはとにかく手っ取り早く、安くバイクを手に入れようと解体屋に目をつけた。事故車や解体された部品を格安でかき集め、一台に再生するのだ。

 この時、まずカブのエンジンを探す。このエンジンは滅多なことでは壊れないので、そいつさえ手に入れば何とかなったという。もちろん、これは今も昔も非合法である。ナンバーが取れないのだから当然だ。それでも、一日でも早くバイクに乗りたいという欲求に勝てなかった彼らは、いったい何を求めていたのだろう。スピードという快感以前に、警察の目を逃れるというスリルを味わいたかったとでもいうのか。

 さすがにそんな連中とは友達になれる気はしなかったが、それでもふと考えた。スクラップからバイクを組上げる技術があるなら、さぞかし高額なバイト代を稼げただろうにと。