syouwanowasuremono’s blog

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「友達の友達は・・・」

【ホンダ CB350】バイク編⑪

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 一緒に走っていたバイク仲間というのはほとんど幼馴染みだったが、高校はバラバラだった。そのため自分の知らない、仲間の友人との出会いがあった。

 CB350に乗っていたモリタ君(仮名)はそのひとりだ。彼は仲間のWと同じ高校だったが、連(つる)むことを好まなかったので一緒に走ることはなかった。ただ住まいが隣町だったので、バイクで走っていると時たま遭遇した。

 彼はタンデムシートにいつも女の子を乗せていた。Wの話では、中学時代から付き合っている彼女だという。なるほど。単独行動の理由はそういうことだったのか。

 ある時、出先の駐車場でそのふたりにばったり会った。ひょろりと背の高いモリタ君の横には、小柄でセミロングの髪をポニーテールにした例の彼女が寄り添っていた。その彼女をまじまじと見て、羨望よりも嫉妬心が疼いた。化粧っ気がないにも拘わらず、自分の知るどの子よりも可愛かったからだ。

 彼の愛車のCB350は見た目も性能もバランスが良く、突出したところがない。言い換えると、面白みのない「優等生」のようなバイクだった。しかし、この優等生は侮れない。低速から高速までそつなくこなし、コーナリングも安定している。だから乗っていて疲れない、ある意味極上のマシンなのだ。

 ―――と評価しつつも、一方で素直に認められない自分がいた。頭に浮かぶのがCB350単体ではなく、にやけた笑顔のモリタ君と人形のような可愛い女の子とのセットだったからだ。何だか彼らを褒めるようで釈然としない。要するに、相も変わらずもてない男の僻み根性でしかなかった。ああ、自分はどれだけ女の子と縁の無い日々を送っているのだろう・・・。

 そんな惨めな気分を払拭してくれたのは、仲間のN(W1S〈ダブワン〉の彼である)の言葉だった。

「馬鹿な奴だな、俺たちの歳でひとりの女に決めるなんて。いい女はいくらでもいるのに」

 いつもなら眉を顰めるところだが、この時ばかりは不思議と腑に落ちた。いかにも乱暴な物言いだが、軟派野郎の言葉には妙な説得力があった。確かに公平性に欠け、明らかなセクハラだという責めも甘んじて受けるつもりだが、身近な仲間の言葉にはつい頷いてしまう。

 どうやら、友達の友達とは必ずしも友達になれるわけではない、ということらしい。その理由が、つまらない“やっかみ”だったとしても。

 ところで、二人はあのままゴールインしたのだろうか?

 ―――おっと、(友達でもない奴のことなど)どうでもいいことだ。

 そう、余計なお世話である。