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〈昭和の忘れもの〉バイク編 ㉑

【ホンダ ウイングGL400カスタム】

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イージー・ライダー』(Ⓒコロンビア映画といえばアメリカン・ニューシネマの代表作である。主題歌の『ワイルドで行こう』も大ヒットし、ピーター・フォンダデニス・ホッパーの駆る俗に言う“チョッパー”が日本でも脚光を浴び、改造バイクが一部で横行したこともあった。

 もちろん違法であり、そもそも日本の道路事情に全くそぐわない代物だった。長く伸びたフロントフォークは、延々と直線が続く大陸横断道路が存在するアメリカだからこそ成立するもので、日本国内では交差点をまともに曲がることさえできない。

 ところが、最盛期を迎えつつあった国内2輪メーカー各社は、そうした話題性・ニーズに便乗する形で、次々とアメリカンモデル”なるものを世に送り出した。もちろんフロントフォークは伸ばせなかったが、広くて手前に湾曲したバーハンドル、足つき性のいい低いシート、一段高くなったパッセンジャーシート等々でゆったり感を演出し、ロングツアラーとして仕立てたのだ。

 ウイングGL400カスタムは水冷V型2気筒、シャフトドライブという新機軸を投入したホンダの意欲作であった。古いバイク乗りの自分は魅力を感じなかったが、『イージー・ライダー』に触発された新規ライダーには好評だったようだ。

 国内各社が作り上げたのは本家とは全くの別物だが、“チョッパーもどき”と揶揄できない完成度の高さは、さすがは日本メーカーだと賞賛された。

 ここで、再び先輩のDさんの登場である。『デートカー』のシルビアに乗っていたあの人物だ。ある時、新居に遊びに来ないかとの誘いがあった。郊外ながら、駅近の4LDK+Sのマンションを購入したという。いくら高給取りの独身貴族(死語か?)とはいえ、まだ20代での話である。

 駅の直近とのことだったので、道路事情や駐車場の状況も勘案してバイク(CB750フォア)で行くことにした。判断は正解で、来客用の駐車場は少し離れているとのこと。バイクは駐輪場の空きスペースに停め、新居に案内された。友人にマンション住まいの人間がいなかったので比較できなかったが、新築ということもあり清潔感溢れる機能的な造りだった。最上階でベランダも広く、当時としてはかなり高額な物件だったと思われる。

 羨ましさと目新しさに圧倒されながらも、相変わらずフレンドリーな対応で心地良い時間だった。何より、新居に招待されたことで距離が近づいたように感じ、以前にも増して口が軽くなった。話題は例によってクルマや趣味が中心だったが、バイクの話をするとDさんの目が輝いた。

「楽しそうだね。僕でも乗れるかな?」

 “楽しむこと”に貪欲な彼のアンテナに引っかかったらしい。

 そこからはバイクの話になり、あっという間に時間が過ぎた。Dさんの過熱ぶりは半端ではなく、別れ際の一言は「バイクを買ったら一緒にツーリングに行こう」だった。軽いノリの冗談だと思った。なぜなら、彼は2輪の免許を持っていなかったからだ。

 しかし、それから2ヶ月ほど経ったある日連絡がきた。中型免許を取り、バイクを購入したと。Dさんの楽しむことへの熱意、相変わらずの行動力には感心するしかなかった。

 その後、装備品やら小物の購入についてアドバイスを求められ、ショップにも同行した。これまでずっとDさんの背中ばかりを見てきたが、2輪では自分が先輩だ。というわけで今回は初めて頼られる立場になった。優劣や上下に拘りはないが、一つくらい他人に頼られるものがあるのも悪くない。

 約束したツーリング当日。GL400カスタムのエンジンを始動したDさんを振り返り、準備が整っていることを確認して愛車CB750のエンジンをかけた。今日は自分が先導だ。アクセルを煽る。その爆音でかき消されることを承知で声を張った。

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